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童話「風の子 3兄弟」

新美南吉童話賞に出品するために創作した「風の子 3兄弟」
残念ながら入賞にはいたりませんでしたが、公募に
出品するという目的があって生まれた大切な作品です。

春に公開した方が読後の印象がいいと思ったのですが。
ホームページへのアップ前にこちらのブログに原稿用紙形式を
少し読みやすく改行して初公開いたします。

・・・・・・・・・・・
2013年 第25回新美南吉童話賞応募作品出品作品)

「風の子 3兄弟」
               白鳥鈴奈
 あるあたたかい春の日のことでした。
 公園に背の高いサクラの木が立っています。
足元にはピンク色の花びらのジュータンがし
いてあります。

 ついこの間まで、毎日、ネコやイヌやウサ
ギやタヌキたちが遊びにきていました。それ
がお花見のきせつが終わってからというもの
の、遊びにくるものといったら、小鳥くらい
です。あんなに歌ったりおどったりして、に
ぎやかだったのに、ひっそりとしています。
サクラの木はちょっぴりさみしく、たいくつ
に思っていました。

 ところが今日は、自分の目の前に、風の子
の兄弟たちがいます。草の上にすわって、な
にやらみんなで話をしています。サクラの木
は耳をそばだてながら見ていました。

 一番上の兄さんの名前は「ふういちろう」
 青い色のシャツを着て、ナスビのようなお
鼻にメガネをかけています。
 二番目が「ふうじろう」
 黄色のシャツを着て、ラッパのようなりっ
ぱなお耳をしています。
 三番目が「ふうさぶろう」
 赤い色のシャツにぼうしをかぶり、パンダ
のような目をしています。

「何をして遊ぼうか?かけっこなんかどうだ
い?」
 一番上の兄さんが弟たちに聞きました。そ
う言うと、弟たちはいっせいに首を横にふり
ました。

「いやだよ。だって、ふういちろう兄さんが、
一番早いにきまってるもん。」
「そうだよ。いつもぼくたち、負けてばっか
りなんだもん。つまんないよ。」
「なら、力くらべをしようよ。」
 ふういちろう兄さんは弟たちに言いました。
「うん、いいね。でもどうやってやるの?」
「じゃあ、兄さんから先にやってみるから、
ちゃんと見てろよ。」

 ふういちろう兄さんは、大きく息をすい
ました。体はまるでふうせんのようにふくらん
でいきます。顔はトマトのようにまっ赤です。
今にもぱちんとはちきれそうです。

 そしつぎに口を小さくすぼめると、サクラ
の木に向かって、思いっきり息をふきかけま
した。ビュービュー。ビュービュー。ものす
ごい大きな音がしました。木のえだが波をう
ったように、ちぎれそうなほどにゆれていま
す。

 とつぜん、こんな事をされて、サクラの木
はおどろきました。が、もっとおどろいたの
は、えだで休んでいた小鳥たちです。えだか
らずり落ちてしまった者さえいます。小鳥た
ちはあわてばさばさっと音を立てて、どこか
にとんでいってしまいました。

 えだにぶら下がっていた葉っぱたちも、
「あっ!」「わっ!」
と声を上げると、思わずにぎっていた手をえ
だからぱっとはなしてしまいました。目と口
を大きく開けたまま、さみしそうにすーっと
次々に落ちていきました。地面に落ちた葉っ
ぱたちの悲しそうなため息が聞こえてきます。

 そんなことはおかまいなしに、ふういちろ
う兄さんは、メガネをもち上げて、にんまり
笑って言いました。

「おい、おまえら、ちゃんと見てたか?あ
んな大きな木のえだをゆらしたんだぞ!葉っ
ぱをたくさん落としたんだぞ!力が強いって
いうのは、こういう事を言うのさ。」

 次はまん中のふうじろうの番です。向こう
の方から、小さな女の子が歩いてきました。
大きく息をすってから、女の子に向かって、
息をふきかけました。ヒューヒュー。ヒュー
ヒュー。笛をふいたような音がしました。そ
のしゅんかん、女の子の頭にかぶっていた白
いぼうしが、ふわっと持ち上がり、遠くにと
んでいってしまいました。

 女の子はあわてて、とんでいくぼうしをつ
かまえようと手をのばしました。すると、か
わいそうなことに、体のバランスをくずして、
地面に転んでしまったのです。
 女の子はうずくまったまま、なきだしてし
まいました。
 そんなことはおかまいなしに、ふうじろう
はとくいになって言いました。

「ほら、見て見て!あんなに遠くまでぼうし
がとんでったよ。すごくない?」
 次は一番下のふうさぶろうの番です。ふう
さぶろうも兄さんたちのまねをして息をふい
てみました。フーッフーッ。フーッフーッ。
しかし、いくらがんばって息をふいても、体
の小さなふうさぶろうでは何も持ち上がりま
せん。何度も何度もフーッフーッ。フーッフ
ーッと息をふきました。

 すると、どうしたことでしょう。ピンク色
のジュータンの上の花びらが、一まい、一ま
いと、お空の方に向かって、ふわっと持ち上
がっていったのです。
 水色のお空とピンク色の花びらが、なかよ
く手をつないで、くっついてしまいそうでした。

 「なーんだ、お前はたったそれっぽっちか?
そんなちっちゃな軽い物なら、だれだって持
ち上げられるよ。」

 兄さんたちはばかにしたように、ふうさぶ
ろうに言いました。それでもふうさぶろうは
何度も何度もフーッフーッ。フーッフーッと
大きく息をふきかけました。持ち上がった花
びらは、まるでチョウのようにひらひらと空
中を舞っています。

 その時です。さっきまで地面に転んでない
ていた女の子が、急にすくっと立ち上がりま
した。両手を上げると、ばんざいをして何度
も何度もとび上がりました。ひらひらしてい
る花びらを、手でつかもうとしたのです。

ふうさぶろうはさらに、息をふきつづけまし
た。
 その女の子のすがたを、遠くで見ていた他
の子どもたちも、そばにやってきました。男
の子も女の子も小さな子もちょっと大きな子
も。

 みんながピンク色の花びらをつかもうと、
手を伸ばしてぴょんぴょんとび上がりました。
どの子も目をキラキラかがやかせてわらって
います。子どもたちの黒いかげまでもが、地
面ではずんで楽しそうです。

 「ぼくはあんなにいっぱい、花びらを持ち上
げたよ。男の子も女の子も、いっぱい持ち上げ
たよ。だからぼくが一番力もちだよね。」 

 ふうさぶろうが、茶目っ気たっぷりにそう
言った時でした。どこかから低いやさしい声
がしてきました。みんなは、いっせいに声の
した方を見ました。

「そうさ。みんなにえがおの花をいっぱいさ
かせた、きみが一番だよ」
 そこには風の子の兄弟たちを見て、うれし
そうにわらっているサクラの木がいました。
(完)
白鳥鈴奈作 2013年 第25回新美南吉童話賞応募作品出品作品)
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Last Modified : 2019-08-08